2002年、各種のミステリー年間ランキングで第1位を獲得し、直木賞落選の際には一部選考委員の結末を巡る発言がミステリー界全体を巻き込む一大論争にまで発展したことでも話題になった横山秀夫の傑作感動ミステリーを映画化。病に苦しむ妻を自ら殺害した元刑事が、取り調べに際し犯行を認めながらも“完落ち”することなく、決して明かそうとしない自首するまでの“空白の2日間”。映画は、そんな事件に直接関係ないはずの“謎”を軸に、刑事手続きの過程で、刑事、検察、弁護士、判事、さらには記者といった人々が、それぞれの立場で犯人の元刑事と向き合う姿を通して人の命と人生の意味を問う。監督・脚本は「陽はまた昇る」の佐々部清。ある日、元捜査一課警部・梶聡一郎は最寄りの警察署に出頭してきた。そして、3日前に妻の啓子を自宅で絞殺したと告げる。半年前、若くしてアルツハイマー病を発症した啓子の看病のため刑事を辞職し、警察学校で後進を育成して広く敬愛されてきた梶。取り調べにあたった捜査一課・志木も困惑を隠せない。その上、梶は自首するまでの2日間について固く口を閉ざし続ける“半落ち”の状態。現職警官による前代未聞のスキャンダルに県警全体が窮地に立たされる。組織の防衛を優先する県警幹部は、完落ちしない梶の“空白の2日間”に拘り続ける志木の意向を無視し、調書のねつ造で謎の隠蔽を図り、強引な事件の幕引きを目論むのだった。たくさんの登場人物を上手に捌きつつ、原作のメッセージ性や人間ドラマの側面を汲み取った脚本には好感を抱きつつも、ミステリーとしてのカタルシスをバッサリと捨て去ってしまった潔さは原作ファンからすると何とも口惜しいところか。
Amazon.co.jpAmazon Prime VideoABEMAGYAORakuten TVHuluUnextVideomarket